ロシア料理のピロシキを求めて走り回った父ちゃん
某月某日、世の中は大変なことになっている。僕もささやかながら、Googleさんから2月分として頂戴する予定だったお金を、全て募金へと投じさせて頂いた。
ささやかだけれども、これが現在の僕に可能な全て... ではなかった。
なんだか国内ではロシア関係の演奏会が中止されたり、ごく一部に過ぎないけれども、ちょっと行き過ぎに感じられるような出来事も起こり始めた。
そうなると社員としてウクライナ人スタッフのために会社経営戦略を練ることはモチロンだけれども、争いごととは無関係な、ロシア文化を擁護するという活動テーマも生じて来る。ちなみに同じことを、某小児科の先生もTwitterでツイートなさっていた。
これには全く同感なのだけれども、残念ながら僕には、音楽的な感性が欠如している。駅前でロシア音楽を演奏したり、ロシア舞踊を踊るというアプローチは論外だ。
しかし僕の定評は、往生際の悪さであって、ここで何とか少しでも......
と、悩んでいて、辻仁成氏のブログを眺めていて、ピンと来るものがあった。
それが人間の三大本能の一つとも呼ばれている「食べ物」だ!
えーっと、たしかロシア料理というとボルシチ、ビーフストロガノフ、ピロシキ...... そうだっ、ピロシキっ!
ボルシチやビーフストロガノフは、我が家のメニューにはない。近所にはオシャレなロシア料理店など存在しない。だから気軽に料理を堪能したければ、Amazonなどで、レトルトパックを購入することになりそうだ。
しかしピロシキだったら、探せば近所のパン屋にありそうだ。
よし、ますますカロリーオーバーになりそうだけれども、今回のテーマは「ピロシキ食べ比べ」に決定だっ!
そうと決まると、僕はさっそくピロシキを購入する方法を考え始めた... 勤務時間内に。
(^_^;)
しかし一見すると、いとも簡単そうに見えたピロシキだけれども、実はけっこう入手に苦労する代物になっていた。
これもご時世というものだろうか?
「そういえば、北欧さん(パン屋)で大きなピロシキを売っていたわねー」と、家族が教えてくれた。
「もう最後に買ったのは数年前のことだけれども、あれ、けっこう惜しかったわよ」とも。
在宅勤務というのは、こういう時に便利だ。
僕はさっそく、午後三時の休憩時間に北欧パン屋へ向かった。ピロシキ、ピロシキ、ピロシキー
しかし現地に到着した僕を待ち受けていたのは、「本店は2022年2月28日をもちまして閉店しました。今までのご愛顧、ありがとうございました」という、無常にして非情な貼り紙だった。
がーん。
そして、とぼとぼと帰宅したところ、お嬢様から情け容赦ないコメントがやって来た。
「そうだよ、父ちゃん。北欧は全て閉店しちゃったんだよ。」
エッ、何ダッテ?
「横浜店も閉店しちゃたから、寂しくなったねー」
「・・・」
呆然として、思わずペットボトルのキャップを、間違えて締めてしまった。
「無いのなら、作ってしまえ、ホトトギス」は、料理上手な辻仁成さんのアプローチだ。
料理が得意でない... さらに粗忽さゆえに台所の航行権さえ与えられていない僕には、「無いのなら、買ってしまえ、ホトトギス」しか、選択肢はない。
幸い、どうやらコンビニではピロシキを取り扱っているようだ。さすがは僕でさえ知っている、有名なロシア料理だ。
だが、僕の甘い期待は、勤務時間後の散策によって、見事に裏切られた。
ローソン、セブンイレブン、ファミリーマート... 最初はスキップを踏むように軽快だった足取りも、最後は "マッチ売りの少女" みたいになってしまった。目を皿のようにして、念のために各コンビニを2店ほどチェックしてみても、ピロシキは影も形もない。
大々的に売られているのは、カレーパンばかりだ。カレーパンは一大セール期間中のようであり、陳列棚もピロシキ用スペースが撤去され、カレーパンに切り替わってしまったのだろうか。
ピロシキ、ピロシキはどこかにありませんかー
道行く人にマッチを買って貰おうとする可哀そうな少女のように、ふらふらと僕は街を小一時間も彷徨ったのだった。
そして自宅に帰り、全く成果が無かったことを、とつとつと家族に報告した。
彼女も北欧が全店閉店したことは知らなかったらしい。
「えっ、あの北欧が?」と、驚いていた。
「あの大きなピロシキは、けっこう気に入っていたんだけどなあー」と、彼女はため息をついた。
ため息をつきたいのは、僕だって...... ん?
チョット待ッテ下サイナ
彼女は北欧パン屋のピロシキが好きとのことで、何度もご購入なさっていたらしい。
そして北欧パン屋の店舗は、横浜駅にも出店していたけれども、基本的にはお横浜と大船を除くと、都内や小田急江ノ島線・新宿線沿いに多い。
つまり結婚して浜っ子の座を返上してから、僕の目の前でピロシキを食べていた訳である。
つまり僕もピロシキを見たことが... そもそも、ピロシキって、どういう形をしているのだろうか?
もしかすると、イメージしていたカレーパンのようなものではない?
いやいや、やっぱり北欧パン屋のピロシキは、カレーパンにそっくりだ。
(しかし何というタイアップ企画だろうか...)
しかし... 何かが... 誰かが僕に、ピロシキに関して何かを訴えようとしている。ぼんやりと、丸いイメージが...
そしてこの違和感は、近所に店舗を構えているパン屋さんたちを「ピロシキ」で検索した時に、めでたく解消した。
冒頭画像の通りで、これもピロシキなのである。
パン屋ヴィ・ド・フランスが販売している、「フランスピロシキ」というパンなのだ。
パンに塗られたチーズが、いかにもフランスらしさを象徴している。
つまりロシアで生まれたピロシキは、ロシアと友好関係のあるフランスでも広まり、最後にはフランスピロシキが誕生したという訳だ。
もちろん僕が、疲れた体に鞭打って、ヴィ・ド・フランスへ赴いたことは言うまでもない。そして苦労した甲斐あって、めでたく最後の一つ(ラスト・ワン)をゲットすることに成功した!
そういえばフランス在住の辻仁成さんもコメントしていたように思うけれども、フランスのマクロン大統領は平和実現に懸命らしい。
なんでも昨日は国家元首同士で6時間も語りあい、もはや介護士といった趣きさえ生じているらしい。
さすはフランスと、フランスを代表する大統領だと言ったところだろうか。
ともかくフランスピロシキは美味しかった。
電子レンジで30秒ほど温めたら、レンジの扉を開けるなり、香ばしいチーズの香りが部屋いっぱいに充満した。写真を撮らずに、そのまま食べたいという誘惑を我慢するのには、乏しい忍耐力を総動員する必要があった。
(なんとなく、見た目は肉まんに似ていないこともない)
ともかくそれまでの苦労と緊張が一気に溶け去るように、フランスピロシキはおいしかった。
人間は、腹が減ると怒りっぽくと言われる。少なくとも僕は、怒りっぽくなる。国家元首たちも、ピロシキを食べながら冷静さを取り戻すことをオススメしたいところだ。
国破れて山河あり。
そもそも今回の発端は、国の礎となる土地を奪い返すための行動だというけれども、人々の心のよりどころとなる文化的なバックボーンは、フランスピロシキのように世界へ広まっている。
その文化的な広まりの延長として、閉店してしまったけれども、北欧パン屋ではピロシキを大々的に扱っていた。
それだけでは満足できないというかもしれないけれども、世界からロシア文化は認められているということで、ぜひ矛先を収めて欲しいと願う今日この頃である。
かの国が世界のリーダーという立場は、誰もが認めるところである。だからこそ、リーダーの余裕をもって、ここは余裕をもって振舞って貰えると嬉しいと思っている。
それに100年後にフランスピロシキしか残っていなかったら、何だか妙に寂しいと思いませんかね?
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野正史
P.S.
マクロン大統領の橋渡し努力、本当にエラいよなあ。
明日もフランスピロシキを買って食べることにしますかね。フランス、万歳!