魔法科高校の劣等生

[最終巻] 魔法科高校の劣等生(第32巻)は、著者も想定外の結末

魔法科高校の劣等生

人気ラノベの魔法科高校の劣等生、アチコチで「期待外れのラストだ」という評価が吹き荒れています。

これは当然の感想だろうと思います。

何しろ著者の佐島勤先生も、最初に考えていたのとは異なるエンディングに変更した可能性が高いです。

今回は、どうしてそのように考えているのかを解説させて頂くことにします。

魔法科高校の劣等生とラスト

まずネタバレを気にする人は、このあたりで読むのを止めておいた方が良いでしょう。

ただし今回は続編「続・魔法科高校の劣等生 メイジアンカンパニー」編が、2020年10月10日に発売されます。

つまり予想通り、主人公は無事に生き延びる訳です。逆にいうと、最大の強敵と位置付けられた九島光宣には、アッサリと勝利する訳です。

最終巻で今までの伏線回収や、次巻のことを考えると、著者が書ける内容は決まっています。ネタバレも何も、あったものではありません。残されたのは、相変わらず冴えわたる描写力とか、現実っぽいシナリオ構成が中心です。

あ、すいません。いちおう最終巻でもあるし、シリーズの概要を紹介しておきましょう。

「魔法科高校の劣等生」とは、SFジュブナイル小説です。多感な十代を対象読者として、魔法使いである兄妹の生活を描いています。二人とも世界でも屈指の魔法使いの四葉家の一員で、魔法力は世界屈指です。

特に兄の魔法力と研究力は世界一とも呼べるレベルであることが世界中に知れ渡ってしまい、政府機関や他国から狙われます。果ては精神寄生体(パラサイト)とも戦うようになり、最終巻では魔法師&パラサイト化した九島光宣と決着をつけます。

なお兄は精神改造を施されており、感情などを司る部分を魔法を駆使するのに使われるようになっています。そのため妹への愛情以上は感情というものがなく、その代わりに強大な魔法を使用できます。その気になれば、世界中を火の海に変えることだって可能です。

妹は精神改造されていませんが、そもそも遺伝子改造を受けており、生まれた時から容姿端麗で頭脳優秀なのだそうです。「いやいや、作中では全然違うでしょ」と言われるかもしれませんけど、そういう設定です。

(個人的には、そんなこと出来るならば高IQな人間を量産した方が効率… ま、小説の設定ですから)

で、冒頭にコメントしたように世界を相手に活躍している兄が、最終巻では「最大の強敵」と相まみえることになります。二人が闘う理由は、大昔に流行した「北斗の拳」という少年マンガのように「愛のため!」です。

著者は多感な少年少女向けに中二病的な話を展開するのは得意ではなく、SFチックなストーリーになります。ここら辺は一般的なラノベとは異なっており、そのストーリーだけでも十分に楽しめます。

ちなみにタイトルの「魔法科高校」からお分かりのように、主に高校時代を扱っています。ただし世界を相手にするだけあって、政府要人が登場したり、政府の黒幕さんなども登場しています。

最終巻の感想

まず最初にコメントしてしまうと、この最終巻は「著者としても想定外」の結末となっています。

「良い」「悪い」といった評価は、個人的な認識の話です。あまり触れても意味がないでしょう。ちなみに我が家のお嬢様は熱狂的なファンでしたが、今では完全に冷めきっています。

(彼女の読解力が伸びて来て、小説の登場人物たちの心情描写に興味を持つようになったと思いたいです)

されそれはともかく、私が想定外の結末だとコメントしている理由を紹介しておきましょう。

まず作者の構成力は素晴らしいし、この「魔法科高校の劣等生」は電撃文庫で発表された時点で、すでに最終巻迄のシナリオが決まっていました。と、いいますか、佐島勉先生は、発行予定巻数まで言及していました。

さすがは未来感を閉塞的に感じるという著者です。このストーリー構成力は脱帽ものです。最終巻もキッチリと続編への繋がりが紹介され、決着も無事について一区切りとなっています。

書いているうちに展開が変わったり、そもそも結末がかわってしまう著者も多いです。そのような作品と比較すると、「ここでこれを書く」といった予想は出来るし、ストーリーの展開も論理的です。

ただ… これだけの力量を持つ著者なので、逆に路線変更した部分がハッキリと際立ってしまいます。

まずラスボスの九島光宣ですが、当初は亡霊を吸収して性格が悪役に変わっていました。自分の祖父も手にかけてしまいます。

この「魔法科高校の劣等生」は著者がメーカー技術者出身だけあって、技術や研究の価値を大きく評価しています。九島光宣も主人公の司波達也と同じく高校生ですが、その知識や研究力は抜群です。

(そんなこともあって、ラスボスに選ばれているようです)

ま、普通はここまで悪役にすれば、最終決戦というのは壮絶なバトルを期待してワクワクします。というか、「バトルだ! バトルだ!」と喜ぶお嬢様には、その最終決戦こそが最大の楽しみでした。

しかし… 予想通り、1冊に盛り込むこともあって、戦いはアッサリと終わっていますね。「えっ、これがラスボスとの最終決戦?」と、驚いた方も多いでしょう。

そうでしょう。何しろ続編に続く内容にまとめる必要があるのです。最終決戦に紙面を割いているような余裕はありません。また今までの話をまとめるだけでなく、続編に向けた伏線を張っておく必要があります。

これを「分厚くても一巻」という限られた紙面で、分かりやすい筆致で鮮やかに仕上げているのです。私としては、佐島勉先生の見事さには感心させられています。

結末変更の理由

さてそれでは、一体どうしてエンディングを変更したのでしょうか。

「魔法科高校の劣等生」は、佐島勉先生が過去にコメントしているように、最初からエンディングまで決まっていた話です。これだけ緻密で大胆なストーリー構想力を持つ著者が考えた結末だから、まず著者が変更したという可能性は無さそうです。

そう考えると、必然的にKADOKAWAサイドが自ら、もしくは外部からの影響でエンディング変更を希望したということになります。

そこで気になるのが、次の3シリーズです。

  • 既刊の「司波達也暗殺計画」
  • 続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー
  • 新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち

ま、常識的に考えると、司波達也は高校卒業するから、「魔法科高校の劣等生」では無くなる訳です。真面目な編集部門だと、「別な劣等生がいないと『魔法科高校の劣等生』というタイトルにならない」でしょう。

そもそも十代向けのSFジュブナイル小説なのだから、年齢的にも現在の登場人物ではアウトです。

私は「司波達也暗殺計画」も良い小説だと思うし、実際に図書館で貸出予約が結構あるので、続編は続いて刊行されるかと思います。ただし残念ながら、躍進が期待される電撃文庫の中心的存在には出来そうにありません。

だから新・魔法科高校の劣等生シリーズが必要となる訳です。ただし主人公の司波達也以外にも男性の劣等生は登場しているので、女性を主人公に選ぶことが必要そうです。

ただ… 佐島勉先生は「司波達也暗殺計画」でもメインキャラに女性が二人登場していますけど、多感な十代の少年少女を引きつけるのは難しいように見えます。ここらへんは実際に多感な十代の子供を育てている私には、「仕方ないよなあ」という感想です。

(そもそも減少しつつある多感な十代の少年少女で、文庫本の小説を読むような層をメインターゲットにする必要があります)

私や佐島勉先生が十代の頃の子供たち、今どきの十代の子供たちって、全く異なっているように見えます。「十代なんだから、基本は同じでしょ」という方は、実際に接してみることをオススメしたいです。

ただし佐島勉先生の力をもってすれば、「新魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち」は電撃文庫シリーズの中では高評価には出来るでしょう。だから「魔法科高校の劣等生」を刊行する価値はあります。

それから終了した「魔法科高校の劣等生」は、放置すると売れ行きが一気に落ちてしまうのが一般的です。だから引き続き、魔法科高校の劣等生の本編を継続させる必要がある訳です。

したがって「続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー」編を続ける必要がある訳です。

なお以上の二冊は、別に佐島勉先生が自ら執筆しなくても良いかと思っています。本編が続くといっても、今までの読者も大人になり、興味の対象が変わって行くでしょう。またキグナスの乙女たちも、宇宙人を相手にするようなものです。

最近はチームで活動する時代ですし、佐島勉というネームバリューを使って、新進気鋭の作家が執筆するのは大いに良いことかと思います。

(そもそも新進気鋭の作家が減少しているから、KADOKAWAや関連業界は佐島勉先生に頼る必要がある訳です。他のように、「復刻版」ビジネスするだけの歴史がありませんから)

あ、そういえば本編では地球上の話は終わってしまったようだし、ソードアートオンラインのように電脳世界の話にも出来ないでしょう。

そうすると続編の舞台は、「宇宙」になるでしょうか。主人公たちも大学卒業して社会人になることだし、「宇宙人との遭遇」もアリかと思っています。

(もともと、「SF」ジュブナイル小説ですし)

まとめ

と、いう訳で、私からみるとエンディングが当初予定から変わってしまった「魔法科高校の劣等生」でした。

しかし、なかなか出版業界や関連業界を取り巻く状況も厳しいです。一気にシリーズが増加するというのも、関係者で検討した末の判断であるように見えます。

それに昨今の世界情勢をみると、海外売り上げを期待するのは慎重になった方が良さそうですし、アニメも安価な労働力に困る状況となりそうです。

(AI(人工知能)は、まだ当面は作画を代わることは難しいでしょう)

ともかく佐島勉先生には周囲や読者の期待が大きくて大変かと思いますが、年齢も年齢です。倒れるようなことがなく、健康にお過ごしになられることを祈っています。

そして「魔法科高校の劣等生」には、お嬢様が大変お世話になりました。ありがとうございました。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:遊川学